相続財産(銀行預金等)
預金者死亡後の銀行預金の払戻請求は、共同相続人全員でする取扱がされています。
この取扱を事実たる慣習として行なわれているものと見て妨げないとした上で、相続人が相続により取得した部分の預金の払戻請求を認めた事例があります。
理由として、それが民法92条の適用を受けるためには当事者がその慣習による意思を有するものと認められなければならないこと、預金債権は指名債権として預金者は特定されている可分の金銭債権であり、預金債権者が死亡し相続が開始すると同時に法律上当然に共同相続人に分割承継されること、また、遺産の相続について紛争を生じている場合、相続預金の払戻請求を共同相続人全員ですることは事実上困難なときもあり、あくまで共同相続人全員の署名押印のある支払請求書を要するとすれば、相続により取得した債権の行使が不当に妨げられることともなること、これらを勘案すると、本件で一般顧客たる預金者である被相続人が金融機関との間で私法上対等の立場で預金契約を締結するに当たり、相続預金の払戻請求をするには共同相続人全員でしなければならないとする旨の事実たる慣習による意思を有していたとは到底認めがたいところであり、そうすると、そのような慣習が存するとしても相続人はこれに拘束されることなく、相続預金のうち取得した部分につき、その払戻請求をするには単独でなしえるものというべきであるとしました。
民法第92条
法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。
郵便貯金の相続につき、その帰属者及び帰属する範囲が確認されている場合には郵便貯金規則33条を適用する必要はないこと、銀行預金の相続につき、相続人全員の同意書か遺産分割協議書の提出がなければ相続預金の払戻に応じない取扱には合理性があり、大量処理のための必要性も認められるが、相続人全員による払戻請求が困難な場合にまでこの取扱を貫徹するのは不合理であり、現に銀行等においても、葬儀費用等をまかなうための払戻には相続全員による請求を要しない扱いをしていることが認められ、銀行の取扱が事実たる慣習となっているとまでいえないなどの理由により、共同相続人の1人による法定相続分の預貯金払戻請求を認容した事例があります。
郵便貯金規則第三十三条
郵便貯金に関する権利が相続又は会社の合併若しくは分割により承継された場合には、第二十九条から第三十二条までの規定を準用する。ただし、この場合において、名義書換請求書又は転記請求書に添付すべき書類は、相続にあつては戸籍謄本又は相続に関する証明書、会社の合併又は分割にあつては合併又は分割に関する証明書とし、又、二人以上の相続人があるときは、名義書換又は転記の請求をする相続人以外の相続人の同意書を提出しなければならない。
定額郵便貯金につき、共同相続人の1人は自己の法定相続分に応じて払戻請求をすることができるとした事例があります。
遅延損害金は訴状送達の翌日から請求を認めました。
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