相続分零(ゼロ)の指定
被相続人が、遺言で共同相続人の相続分を零(ゼロ)と指定することがあります。
相続分の指定は、遺留分に関する規定に反することはできませんので、遺留分を侵害した相続分の指定は、その範囲で遺留分権利者の減殺に服します。
民法第902条
1 被相続人は、前2条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前2条の規定により定める。
被相続人の「相続させない」旨の遺言を相続分を零(ゼロ)と指定したものと解し、その相続人の遺留分減殺を認めて相続分を算定し、遺産分割の審判をした事例があります。
被相続人の遺言で「相続分がない」とされた相続人の遺産分割事件申立を、この遺言は遺留分を侵害していないから適法であり、その相続人には遺産分割申立の当事者適格はなく、既に他の相続人の間で遺産分割協議が成立しているとしてこれを却下した事例などがあります。
これに対して、「私の財産年金の受給権は一切受け取らせないようお願いします」という趣旨の遺言は、推定相続人廃除の意思表示と解するのが相当であるとして、この遺言を「相続分零(ゼロ)とする」と指定したと解した遺産分割の審判が取消された事例がありますので、「相続分零(ゼロ)とする」旨の遺言は明確にされなければなりません。
被相続人の遺言で取得分がないとされた相続人を除く相続人全員が、遺言の解釈及び遺産全部をその解釈に基づいて遺産分割手続中で分割することに合意している場合には、既に遺言中で取得者が定められている物件についても遺産分割の対象とすることができ、また、相続人の一部の者がした遺留分減殺請求によって取り戻された遺産を含めて分割することに合意している場合には、その合意によって審判することが許されるとした事例があります。
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