不実登記の抹消請求
共同相続人Aは、相続不動産につき、無断で、単独名義の相続登記をした場合、共同相続人Bは、次のことができるとの説があります。
@Aに対して登記を共有登記に改めるため全部の抹消を求めることができる。
AAから権利を取得した第三取得者の利益に害するおそれがある場合には更正登記のみ許され、そのおそれがないときは抹消登記を請求できる。
BAの登記は、その持分の範囲で事実に合致しており、Bは自己の持分についてだけ更正登記が許される。
C持分についての移転登記が許される。
判例はBの説をとるとされています。
更正登記とは
登記事項に「錯誤又は遺漏」があった場合に、当該登記事項を訂正する登記をいう。
変更登記が、登記事項が事後的に変動した場合に行われるのに対し、登記事項が当初から誤っていた場合に行われる点で異なる。
土地の地目・地積等が誤っていたとき、建物の種類・構造・床面積等が誤っていたときは、更正登記がされる。
所有権移転登記とは
所有権保存登記又は前の所有権移転登記の名義人から所有権の移転を受ける場合にされる。
登記の目的には「所有権移転」と、登記原因及びその日付には「平成○年○月○日売買(又は贈与、相続等)」と記録され、権利者として新しい所有者の住所・氏名が記録される。
被相続人が生存中に売買の原因として相続人1人に対して所有権移転登記をした場合、被相続人の死亡後に、この登記を、相続を原因とするものに改める更正登記手続をすることはできないとされています。
共有者の1人は、その持分権に基づき、共有不動産に加えられた妨害を排除することができます。
共同相続人の1人が共同相続人4人名義の相続登記をした後に、自己の共有持分を第三者に譲渡して、持分移転登記がされている場合、その譲渡が無効であるときは、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができるから、他の共有者は、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独で、その持分移転登記の抹消登記を請求することができます。
Aは、父の不動産を共同相続したが、共同相続人に無断で自己名義に単独相続登記後に死亡した場合、共同相続人Bは、単独でAの相続人に対して、法定相続分による更正登記手続を請求することができます。
この場合、Bは他の共同相続人の持分についても更正登記手続を請求できるとした事例があります。
しかし、共有者の抹消登記請求は自己の持分に限ると解した事例もあります。
BがAも相続している場合、この相続後の持分にする更正登記手続は認められません。
抹消登記とは
既存の登記の権利が最初から存在しなかったか、事後的に消滅した場合には、抹消登記がされる。
共同相続人の1人が相続開始前に被相続人所有不動産について実態と符合しない不実の所有権移転登記を経由した場合、他の共同相続人による保存行為として登記の全部抹消登記請求を認めた事例があります。
所有権保存登記とは
新築などで、初めて甲区に記録される場合に、所有権保存登記がされる。
所有権保存登記の申請をすることができる者は、表題部の所有者等に限定されている。
登記の目的に「所有権保存」と記録され、所有者の住所・氏名が記録される。
登記原因及びその日付は登記されない。
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