遺言の撤回の撤回
遺言が撤回されたときは、その遺言は初めからなかったと同様の結果となります。
この撤回行為がさらに撤回された場合に、前の遺言の効力が復活するかどうかについて、理論的には、遺言者の真意を探求して、その意思によって決定されるべきです。
遺言を遺言の方式に従って撤回した遺言者が、更に右撤回遺言を遺言の方式に従って撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条但書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して遺言の復活を認めるのが相当と解されています。
本件では、遺言者は乙遺言をもって甲遺言を撤回し、更に丙遺言をもって乙遺言を撤回したものであり、丙遺言の記載によれば、遺言者が遺言である甲遺言を復活させることを希望していたことは明らかであるから、甲遺言をもって有効な遺言と認めるのが相当であるとしました。
(撤回された遺言の効力)
民法第1025条 前3条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
民法1025条本文は「前3条の規定により」と規定していますが、民法1024条所定の遺言書の破棄及び遺贈の目的物の破棄は、事実行為ですから、それを撤回するということはあり得ませんので、撤回の撤回が問題になりません。
民法1025条の適用があるのは、右以外の法定撤回の場合だけです。
第一遺言をした後に、その遺言を撤回する第二遺言をし、その後第二遺言を撤回する第三遺言をした場合や、第一遺言を撤回した第二遺言を破棄してしまった場合は、全称否定の全称否定となって、第一遺言を復活させる意思以外は考えられませんから、第一遺言は復活するとされます。
(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
民法第1024条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
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