老人痴呆者の遺言の無効
遺言者は昭和62年3月5日脳梗塞で入院し、同年8月6日退院、同10月15日再入院、同年11月28日退院以後自宅療養、平成元年には遺言者に対する禁治産宣言申立がされ、平成2年8月30日84歳で死亡したが、昭和63年3月22日及び1989年8月3日付自筆証書遺言は、作成当時、その内容と効果を理解した上でこれを書く能力がなかったとしてその無効を確認した事例があります。
遺言者は、本件公正証書遺言作成当時、中等度以上の痴呆状態にあったと認められ、精神医学上の精神能力の点からも、本件遺言作成経過及びその当時の遺言者の言動等からも、本件遺言の内容を理解し、本件遺言をすることから生じる結果を弁識判断する能力はなかったと認めるのが相当であり、遺言者の意思能力の欠如により本件遺言は無効であるとした事例があります。
遺言者は、生前専門医の診断を受けていなかったが、本件遺言当時は正常な判断力・理解力・表現力を欠き、老人特有の中等度ないし高度の日常会話は一応可能であっても、表面的な受け答えの域を出ないものであり、**園長が本件遺言書作成の翌日遺言者に対して昨日の出来事を尋ねても、本件遺言をしたことを思い出せない状況であったこと、同園入園に際し、**係長の出発を促しても反応がなく、うつろ状態であったこと、遺言者は控訴人とこれまでほとんど深い付き合いがなかったので、本件不動産35筆を含む全財産を同人に包括遺贈する動機に乏しいし、全財産を遺贈し、遺言者姉弟の扶養看護から葬儀まで任せることは重大な行為であるのに姉には何らの相談をしていないのみならず、控訴人から話が出てわずか5日の間に慌しく改印届をしてまで本件遺言書を作成する差し迫った事情は全くなかったこと等を総合して考えると、本件遺言当時、遺言行為の重大な結果を弁識するに足りるだけの精神能力を有しておらず、意思能力を有しておらず、意思能力を欠いていたものと認めるが相当であるとして、特別養護老人ホームに入所していた遺言者がした公正証書遺言を無効とした事例があります。
遺言者は、遺言時、老人性痴呆の改善がなかったこと、遺言の重要部分の趣旨も明確であるとはいえないことなどから、遺言者は遺言を行なう意思能力を欠いていたとして、76歳の女性の自筆証書遺言を無効とした事例があります。
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