自筆証書遺言の氏名の自書
自筆証書遺言の氏名の自書は、遺言者の同一性と、遺言が遺言者の意思によるものであることを明確にするために要求されています。
したがって、氏名が明記されていない遺言書又は氏名を他人が書いた遺言書は無効です。
氏名の表示は、遺言書の同一性が確認できる程度のものであれば十分であるとされています。
通常は、戸籍上の氏名が用いられます。
しかし、遺言者本人の同一性が認識される限り、戸籍上の氏名でなくても、遺言者が日常用いているペンネーム・雅号・芸名・屋号・通称などを用いても差し支えないとされています。
氏又は名だけを記載しても、遺言書の内容その他から同一性が認識できれば有効とされます。
「汝の父」とか「上記の者」というような表示でも、遺言書の本文中に氏名の記載があり、遺言者が誰であるかが明らかであれば有効とされます。
自筆証書遺言に氏名の記載を要するのは遺言者を特定するためであり、遺言者の何人であるかが明確になる以上、右氏名は戸籍上の氏名でなくともまた氏名の一方でも足りるとし、遺言者(本件自筆遺言書作成前日本に帰化した元無国籍者)の戸籍上の氏名「サホブケイコ」と記載しないで「C・M サホルスキー」もしくは「キャサリン・M・サホルスキー」とある遺言書の署名は遺言者を表示するものとして自筆証書遺言の氏名記載の要件をみたしてると認めた事例があります。
氏名を自書しても、同一の氏名の他人と混同されるおそれがある場合です。
この場合は、氏名だけで足らず、住所・職業・雅号などを併記して遺言者が誰であるかを明確にすることが必要であるとされます。
住所などの併記を要求することは、遺言の方式をそれだけ厳格にすることとなり、妥当でないとの説もあります。
氏名の自書が遺言書自体になく封筒にだけある場合は、遺言書と封筒とは一体をなすものと解して氏名の記載のある遺言書として有効と解されています。
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