裁判上の和解の無効
本件土地について、甲を貸主、乙を借主とし、本件建物の所有を目的とする期限の定めのない使用貸借が存在することを確認する裁判上の和解が成立し、裁判官が和解条項を読み上げた。
その後、乙は、期日指定申立をして、その手続において、少なくとも自己の生存中は本件土地の使用借権が保証されるとの錯誤に陥った結果和解に応じたものであり、事前に和解条項が提示されたり、個々の条項についての詰めや確認が行われたりしたこともなく、和解条項を検討する機会がなかったから本件和解は無効であると主張しましたが、少なくとも、被控訴人甲に対する関係では、控訴人乙は、その生存中建物所有という使用目的が終了するまでは本件土地の使用借権が存在するのであり、乙訴訟代理人弁護士の証言を前提としても、本件和解成立当時、控訴人及び同訴訟代理人において、使用目的の終了や本件土地の所有者の交代の有無にかかわらず、控訴人の生存中は本件土地を使用できる保証がなければ本件和解に応じる意思がなかったとまで認めるに足りず、控訴人側に錯誤があったとは認めがたいし、仮にこの点について控訴人に錯誤があったとしても、それは動機の錯誤であって、控訴人本人と原審裁判官とのやりとりがあったというだけでは、被控訴人や裁判官にその動機が表示されているとは認められないし、また、原審裁判官の読み上げた本件和解条項の法的意味は、弁護士である控訴人訴訟代理人にとって容易に理解できるものであったから、錯誤につき控訴人側に重大な過失があったとして、和解無効の主張を認めなかった事例があります。
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