「相続させる」旨の遺言の特段の事情
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、特段の事情のない限り、何らの行為を要せず、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されます。
遺言が「相続人A所有建物が存在する本件土地を短冊状に4つに分け、西側から年長順にそれぞれ4人の子に相続させる。」というものである場合、A所有建物の敷地使用権の処置については何ら意思表示がないこと、A所有建物の建築については遺言者の承諾があったのであるから、本件土地を4つに分割するとA所有建物の処置について共同相続人間に紛争の生ずることは遺言当時高度の蓋然性をもって予測できる状態にあったこと、自分の子らの間に紛争を生ぜしめるような遺言の効果をあえて欲っして遺言したものと解することは不合理というべきであるとして、本件遺言は、遺言の効力発生時に直ちに本件土地につき遺産分割がされたのと同様の遺産の承継関係を生じさせるものではなく、本件土地を4人の子が平等に分けて欲しいという遺言者の意思を十分汲みいれた遺産分割の協議又は審判をまって遺産の承継関係を生じさせる趣旨のものであると解するのが相当であるとした事例があります。
この判決は、控訴審で取消されています。
控訴審の判断は、本件遺言は「本件土地を4分割し、控訴人甲にA土地を、控訴人乙にB土地をそれぞれ相続させる」というものであり、その記載上遺贈と解するべき特段の事情も認められないから、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解するのが相当であり、この場合、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせるなど、「特段の事情」があるとは認められず、遺言の解釈として、遺産分割の協議、審判を経るまではA土地、B土地の所有権が控訴人らに承継されないと解する余地はないというものでした。
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