持回りによる遺産分割協議
遺産分割協議は共同相続人全員の合意が要件です。
この場合、必ずしも共同相続人全員が一堂に会して合意を成立させなければならないというものではありません。
相続人の一部が遠隔地に居住するなどの理由で、直接遺産分割協議に参加できないときは、他の相続人が分割案を作成して、提示し、当該相続人がこれに受諾の意思表示をする方式によることも認められます。
この場合、遠隔地居住の相続人の意思が的確に伝達されることを要するのはもとより、当該相続人が遺産分割案の内容を熟知し、これに明確な受諾の意思表示をした時に協議が成立したとされます。
遠隔地居住の相続人Aには、協議書の作成に先立って共同相続人Bから再三電話でその内容を説明し、Aは承諾をしてBに協議書作成のための登録印鑑及び印鑑証明書を送付して、本件協議書が作成されたが、証拠によれば、BがAに対して本件協議書の内容を的確に伝達し、Aがこれを熟知して受諾したとは到底認めがたく、Aが本件協議書の内容を知ったのは、本件に関し調停申立をした後であり、それまでAは遺産分割協議案を書面によって提示されたことも、口頭によって伝達されたこともないことがうかがわれ、これによれば、本件遺産分割協議は本件協議書につきAの明確な意思表示があったとは認められないとしました。
この事例で、Aは自己の登録印鑑及び印鑑証明書を送付後Bから100万円を受領していること、Bとの電話連絡の中で遺産の分配についてはBから一任するよういわれて黙示的にせよ協議の内容を受諾したのではないかとの点については、BがAから遺産の分配について一任されたとしても、Aが遺産のうち自己の取得分はもとより他の相続人の取得分についてもそれがどのように分配されても依存がない旨を明示して一任したような特別な事情があった場合は格別、Aは相続分を等しくする他の相続人が取得するのとほぼ同価値の遺産がAに分配されることを前提として、遺産分割の方法若しくは遺産分割案の作成を任せる程度の意思表示と解すべきであるとしています。
そして、100万円の受領をもって、その余りの遺産の分配を断念したことを認めえるような特別な事情があったとは認めがたく、100万円がAの相続分相当の分配額に当たるともいえないとしました。
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