不在者と財産管理人の利益相反行為
不在者財産管理人が不在者名義の不動産は自己所有であることを主張して所有権移転登記又は抹消登記をするにつき、家庭裁判所に権限外行為許可を求める場合があります。
管理人に所有権があることが契約者や公正証書などの確実な原因証書があって、不在者に登記義務があることは明瞭で、所有権移転登記又は抹消登記の手続だけが残っている場合であれば、その登記手続きは単なる義務の履行であり、かつ、民法108条但書によって双方代理の禁止規定にも触れないので、この行為については権限外行為許可は不要とされます。
(自己契約及び双方代理)
民法第108条 同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
相続人不存在の場合、被相続人の生前処分に基づく履行として、相続財産の管理人が登記義務者として行なう不動産所有権移転登記申請は家庭裁判所の許可は不要とされ、また、管理人が相続財産に属する債務を弁済する行為は管理人の権限内の行為であり、管理人が登記義務者として行なう時効取得による不動産の所有権移転登記申請は時効完成が相続開始の前後を問わず債務弁済行為に該当すると解されています。
相続財産の管理には不在者の財産管理の規定が準用されているのですから、不在者の財産管理についても、同様に解されます。
原因証書が存在しない場合、管理人が不動産の所有権を有しているか、不在者が、登記義務を負担するか否か明確でないから、管理人の権利、不在者の義務は民事訴訟で確定すべきものであり、今後この権利義務を実体法上、訴訟法上の行為をするというのであれば、民法108条本文の規定に照らして、管理人の代理行為は禁止されているから、その延長である権限外行為ということも考えられません。
この場合は、管理人は辞任の上、新たに選任された管理人を相手にこの問題を解決することになります。
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