遺産の全容不明の場合の相続税申告
相続人が遺産の全容を把握するまでに申告書の提出義務が発生しないとか全容が把握できない場合、この義務を免除すると定めた規程はなく、また、前記申告書の提出義務を定めた条項の解釈としても、納税者による相続財産の全容の把握という不確実かつ主観的な事情によって申告書の提出義務の発生又は消滅をもたらすような解釈をとることは相当ではないとして、共同相続人の非協力により遺産の全内容が判明しなかったため、法定期限内に相続税申告をしなかった相続人に課された無申告加算税の賦課処分取消請求を認めなかった事例があります。
相続税の申告書には、課税価格その他の事項を記載しなければならないから、適正な相続税の申告のためには、相続財産の全容を正確に把握している必要があり、納税義務者はその把握にために努力すべきことはいうまでもないが、申告後に相続税額に不足を生じたり過大になったりするような事態が判明した場合には修正申告又は更正請求をすることができるものとされていることからすると、相当な努力を払ったにもかかわらず法定申告期限までに相続財産の全容が把握できない場合に、とりあえず判明している相続財産の範囲内で相続税の申告をすることが禁止されているわけではなく、かえって、相続財産の全容が判明しない場合であっても、判明している範囲で相続税の申告をすることこそが予定されていると解するのが相当であるとされています。
そして、このことは、納税者に判明し得た相続財産の価額が控除額を超える場合であれば、その判明し得た相続財産が相続財産全体のどれぐらいの割合を占めるかにかかわらず、基本的に妥当するというべきであるとされます。
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