無申告加算税の賦課
法定期限内に申告さえしておけば、納税者は、少なくとも無申告加算税を賦課されることはないとされます。
無申告加算税の賦課を免れる「正当な理由」の意味については、相続税はいわゆる申告納税方式による国税であり、納税義務の確定を第一次的には納税者の自主的な申告に委ねる原則をとっていること、そして、納税者の自主的な申告に委ねた法の趣旨に反して、納税者が適正な申告をしない場合には、自主的な申告納税方式を維持するために、各種の加算税を課するものとしていること、しかし、納税者が適正な申告をしようとしてもそれをすることができないような場合には、適正な申告をしなかったとしても申告納税方式の制度が害されるおそれがないから納税者に不可能を強いることになり酷であるから、そのような場合に加算税を課さないものとしていること、加算税を課さない趣旨が以上のようなものであることからすると、加算税を課さない「正当な理由」とは、納税義務者の無申告加算税という行政上の制裁を課することを不当あるいは酷ならしめるような事情をいうものと解するのが相当であるとされます。
このような法の趣旨からすると、法の不知や課税範囲の誤認などの単なる申告義務者の主観的な事情はそれだけでここにいう「正当な理由」に当たらないとされます。
しかし、本件原告は、単に相続財産の内容を知らなかったために申告書を提出することができなかったことを「正当の理由」と主張しているのでなく、原告が共同相続人甲の種々の遺産隠しの行為や態度、さらには市役所、税務署などの不適切な対応等の客観的事情によって、相続財産の内容を知ることができない立場に至ったため、遺産の全部の内容を知ることができず、申告書を提出することもできなかったということを「正当な理由」として主張しているのであり、これらの主張を、単に原告の主観的な事情として排斥することはできず、原告が主張するこれらの事情が主観的なものであって「正当な理由」当たらないという税務署の主張は採用することはできないとされましたが、審理の結果「正当な理由」の存在は否定されました。
なお、無申告加算税は、納税者が法定期限内に申告書を提出しない場合に課されるものであり、「正当な理由」が存在すると認められる場合、例外的に無申告加算税を課さないとするための要件であるから、加算税の申告を免れようとする納税義務者の側にそれが存在することの主張立証責任があると解されています。
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