遺産分割協議の黙示的成立
遺産分割協議には方式について格別の定めがありませんので、「相続分のないことの証明書」を交付したことにより、その成立が認められることがあります。
相続分のないことの証明書とは、法定相続人の中に、亡くなった被相続人から遺贈を受けたり、生前に、結婚、養子縁組や生計のために贈与を受けていた場合、受けた価額が法定相続分の価額に等しいか、または、これを超えるときは、これを受けた相続人が相続分を受けることができない、という場合の証明書です。
この証明書に、該当する相続人が署名、実印を押印し、印鑑証明書を付けます。
相続開始後30年近い年月を経ている場合、少なくとも暗黙のうちにこれを通常の共有にするという方法で分割するという相続人全員の意思の合致があったと推認できるとして、遺産分割協議の黙示的成立を認めて共有物分割をした事例があります。
30年以上も前に共同相続人Aが単独申請した相続登記は法定相続分によること、そのことを共同相続人BがAから聞かされた際にも、自ら何らかの意見を述べたり、また他の相続人に話し、そこから問題化したりすることもなかったこと、法定相続分による相続登記された他の土地が他に売却された際にも、本件土地を含め相続分が相続人間で問題化されたことはなかったこと、被相続人の遺産の分割について共同相続人間で紛争が生じ始めたのは3年前にAが死亡して被相続人の相続人がBだけになった後であることからみて、本件土地については共同相続人Cが死亡した頃までに、相続人の間で、法定相続分の割合で遺産を分割する趣旨の合意が黙示的に成立して遺産分割の協議が調っていたと認められた事例があります。
「相続分のないことの証明書」を交付しても遺産分割協議の黙示的成立が認められなかった事例もあります。
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