取得時効の善意・無過失
占有者の善意とは、自己に所有権があると信ずること、無過失とは、そのように信ずるにつき、過失のないことをいいます。
相続人が登記簿に基づいて実地に調査をすれば、相続により取得した土地の範囲が甲地を含まないことを容易に知ることができたにもかかわらず、この調査をしなかったために、甲地が相続した土地に含まれ、自己の所有に属すると信じて占有を始めたときは、特段の事情のない限り、相続人は右占有の始めにおいて無過失ではないと解するのが相当であるとされます。
自己の耕作地を政府から農地として売渡しを受けた者は、特別な事情のない限り、その売渡処分に瑕疵のないことまで確かめなくても、所有者と信じるにつき、過失があるとはいえないとされます。
買収農地の売渡しを受けて農業用施設として占有している者は、その売渡処分が当然無効であっても、特段の事情のない限り、その占有の始めに善意・無過失というべきであるとされます。
占有の開始は相続によるもので取引によるものでなく、その他判示事実のもとにおいては、土地登記簿を調査しなかったことをもって占有のはじめ過失があったとすることはできないとされます。
占有者において、占有目的不動産に抵当権が設定されていることを知り、又は不注意により知らなかった場合でも、ここにいう善意・無過失の占有者というを妨げないとされます。
甲及び乙が丙所有の一筆の土地の各1部ずつを買い受けるに当たり、隣接の丁所有土地との境界を誤認したため、甲が乙の買い受けた土地の1部を占有した場合において、判示の事実関係(測量士が公図をも参照し、丁からも境界を聞いた上で測定した結果に基づき、丙の代理人、甲及び乙が立ち会って、甲及び乙各自が取得する範囲を定め、係争地を含む土地が丙から甲に引き渡されたものであるなど)があるときは、甲において事前に自ら公図を見るなどの調査をしなかったとしても、甲は、係争地の占有の開始につき無過失であったと認めることができるとされます。
判示の事情(農地法所定の許可を得て所有権移転登記手続きを経由し、その代金を支払ったなど)のもとにおいては、所有者の無権代理人から農地を買い受けた小作人は、遅くとも右登記の時には新権原により所有の意思をもって右農地の占有を始めたものであり、かつ、その占有の始めに所有権を取得したものと信じたことに過失はないいうことができるとされます。
(占有の性質の変更)
民法第185条 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
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