取得時効の援用
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所は時効に基づいて裁判をすることができません。
(時効の援用)
民法第145条 時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
取得時効については、直接時効の利益を受ける者が、裁判上又は裁判外を問わず時効を援用することができ、時効の援用があると権利の取得は確定不動のものとなると解されています。
消滅時効の場合も、規定上、時効による権利消滅の効果は、当事者の意思をも顧慮して生じさせるこことしていることが明らかですから、時効による債権消滅の効果は、時効が援用されたとき、確定的に生ずると解されています。
(時効の利益の放棄)
民法第146条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
被相続人の占有により取得時効が完成した場合、共同相続人の1人は自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎないと解されています。
不動産の売主が売買契約の効力を争うとともに仮定的にその取得時効を援用した場合、売買契約の効力を判断することなく、売主のため取得時効の完成を認めることは妨げないとされています。
甲は、取得時効の援用により、占有開始の昭和37年2月7日にさかのぼって乙所有の本件土地を原始取得し、平成11年6月15日に所有権移転の登記をしたが、乙は、昭和58年12月13日に丙に抵当権者とする抵当権設定登記をしている場合、甲は、起算点を後の時点にずらせて、再度、取得時効の完成を主張し、これを援用することはできないとして、甲の抵当権設定登記抹消登記請求を棄却した事例があります。
時効完成前、あらかじめ時効が完成してもその利益を受けないことを約束しても、その効力はありません。
時効完成後は、自由に時効利益を放棄することができます。
時効利益の放棄は、裁判外でもすることができます。
不動産取得時効に関し、時効利益の放棄の主張が認められなかった事例があります。
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