限定承認後の清算
限定承認者又は共同相続人の中から家庭裁判所が職権で選任した管理人は、相続財産の管理・清算を行ないます。
これらの者が清算行為を懈怠していても家庭裁判所の監督権は及ばないものと解されますので、このような場合には、利害関係人は、家庭裁判所の監督に服する管理人の選任を求め、この管理人をして清算行為に当たらせます。
限定承認者、相続財産管理人は、相続財産をもって、各相続債権者に、それぞれの債権額の割合に応じて弁済します。
ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできません。
(限定承認者による管理)
民法第926条 限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。
2 第645条、第646条、第650条第1項及び第2項並びに第918条第2項及び第3項の規定は、前項の場合について準用する。
この「優先権を有する債権者の権利」に当たるというためには、対抗要件を必要とする権利については、被相続人の死亡の時まで対抗要件を具備していることを要し、相続債権者は、被相続人から生前に抵当権の設定を受けていても、被相続人死亡の時点で設定登記がされていなければ、被相続人の死亡前にされた抵当権設定の仮登記に基づいて被相続人の死亡後に本登記がされた場合を除き、他の相続債権者及び受遺者に対して抵当権に基づく優先権を対抗することができません。
相続債権者は、相続人の清算手続きによらず強制執行により相続債務の弁済を得ることができます。
一般債権者が個別に相続財産に対する強制執行によって権利の実現を図る場合においては、相続財産をもって債務を完済できないことが明らかになり、公平に弁済して清算すべき管理人が負う義務の履行が不可能になった場合には、直ちに破産申立をすることが要請されており、一般債権者の個別執行による偏った弁済の結果が生じるおそれのあるときは破産手続に委ねることを法が予定しているものと考えるのが相当とされます。
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