相続放棄の審理
相続放棄は自己のために開始した不確定な相続の効力を確定的に消滅させることを目的とする意思表示として極めて重要な法律行為であることに鑑み、家庭裁判所をして後見的に関与させ、専ら相続放棄の真意を明確にし、もって、相続関係の安定を図ろうとするものであると解されています。
家庭裁判所は、相続放棄の申述を受理するに当たって、申述が所定の方式によってされているかどうか、申述者が相続人であるかどうか、申述が真意に基づくものかどうか、申述が法定期間内にされているかどうかなどを審理し、判断します。
家庭裁判所が相続放棄申述を受理する場合、形式的要件具備の有無、申述人の真意を審査の対象とすべきことは当然であるが、法定単純承認の有無、詐欺等取消原因の有無等の実質的要件の存否の判断については、相続放棄申述の受理審判は非訟手続であるから、これによって相続関係及びこれに関連する権利義務が最終的に確定するものではないうえ、相続放棄の効力は家庭裁判所の受理審判によって生じ、それがなければ、相続人には相続放棄をする途が閉ざされてしまうのであり、この点を総合考慮すると、申述書の内容、申述人の審問の結果あるいは家裁調査官による調査結果等から、申述の実質的要件を欠いていることが極めて明白である場合に限り、申述を却下するのが相当であると解した事例があります。
原審が認定した催告の事実につき、その存在を抗告人が争っていることは、相続放棄申述書の記載から明らかであるから、このような場合には、原審としては、単に債権者からの事実調査等だけでなく、更に進んで抗告人からも審問その他の事実調査をして、事実関係を把握し、判断をすべきであって、原審が抗告人からの事実調査等をしないで、本件申述を却下したことは、審判の結論に影響を及ぼす事実の有無につき事実調査等を尽くしていない違法があるとして、申述却下の原審判を取消して差し戻した事例があります。
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