限定承認後の強制執行
相続人の清算手続によらずに強制執行により相続債務の弁済を得ることが行なわれています。
相続人が限定承認した場合にも、被相続人に対する債務名義に基づき相続財産に対する債権の差押ならびに転付命令をすることができるとした事例があります。
券面額のある債権を差し押さえた債権者は、執行裁判所に対し、転付命令の申立てをすることができます。
転付命令は券面額のある債権に限られますので、期限未到来の債権や条件付債権について転付命令を得ることはできません。
転付命令が発せられると、債務者の被差押債権は券面額で差押債権者に移転し、債権額に応じた按分配当ではなく、被差押債権から独占的に弁済を受けることができます。
その代わり、「券面額で」移転するため、200万円の債権であれば、実際には第三債務者の無資力のため20万円しか回収できなかったとしても、200万円の弁済を受けたものとして扱われます。
そのため、第三債務者の資力に不安のない銀行預金や法務局供託金に対して転付命令が申し立てられることが多いようです。
死因贈与を原因とする始期付所有権移転仮登記後、被相続人死亡により相続人が限定承認をし、受贈者(相続人)が仮登記の本登記をした場合、死因贈与には遺贈の規定が準用されている上、死因贈与と遺贈とを別異に考えるべき合理的理由はないから相続人が死因贈与を受けた財産は相続によって得た財産に含まれ、死因受贈者は相続債権者に弁済がされた後でなければ受贈を得られないとし、相続人が限定承認をしても相続債権者は相続人が死因贈与を受けた不動産に対して「被相続人の相続財産の限定内において」強制執行できる旨の執行文によって強制執行をすることができます。
(解除権の不可分性)
民法第544条 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
2 前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
(限定承認)
民法第922条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
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