相続放棄者の財産管理義務
相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その管理を継続しなければならない義務があります。
(相続の放棄をした者による管理)
民法第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
2 第645条、第646条、第650条第1項及び第2項並びに第918条第2項及び第3項の規定は、前項の場合について準用する。
「自己の財産における」とは、「固有財産における」と同様の意味と解されています。
(限定承認者による管理)
民法第926条 限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。
2 第645条、第646条、第650条第1項及び第2項並びに第918条第2項及び第3項の規定は、前項の場合について準用する。
相続放棄者は、相続開始の時から相続人とならなかったことになりますが、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めるまでの空白状態を生ずるまで、その間、相続人、相続債権者、受遺者などの利害関係人に利益を害することのないよう、熟慮期間に引き続いて管理を継続する義務を負います。
相続財産を管理してしていた共同相続人が放棄した場合も、その者は、他の共同相続人が相続財産の管理を始めるまでの間、同様の義務を負います。
放棄者の管理行為は、保存行為、利用行為、改良行為をなしうるに止まり、もし義務を怠って相続財産に損害を生じたときは、その賠償をする責任を負います。
被相続人が生前手形債務の支払に代えて自己所有の不動産権を譲渡してその移転登記が未了の場合、相続放棄者は譲受人の所有権移転登記請求には応訴し、防御することも管理事務に属するとして、原告の請求を認め所有権移転登記手続きを命じた事例があります。
相続放棄者の財産管理には、民法の委任に関する規定の準用があります。
その結果、相続放棄者は、委任者に対して、相続財産の管理状況の報告義務、相続財産の引渡義務を負い、また、管理費用を利息付で請求することができ、管理に際して債務を負担したときは、弁済又は担保の供与を請求することができます。
この場合、委任者は相続人ないし相続財産法人と解されます。
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