限定承認の競売差止めの鑑定人選任審判
相続債権者や受遺者に弁済するため相続財産を売却する必要が生じた場合は競売の方法によらなければなりませんが、相続財産中家宝のようなものを手元に残したいという相続人は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができます。
(弁済のための相続財産の換価)
民法第932条 前3条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。
抵当権実行による競売の差止めはできません。
不動産の価格弁済をした相続人は、法定相続分による共同相続登記をした上で、他の共同相続人の持分につき「民法932条但書の価額弁済」を登記原因として持分移転の登記申請をすることができます。
民法932条の但書に基づく限定承認者が相続財産の競売を差し止める場合における相続財産評価の鑑定人選任の申立は、甲類審判事項です。
@申立権者
限定承認者、相続財産管理人、相続人です。
A管轄
相続開始地の家庭裁判所です。
B添付書類
申立人・被相続人・相続人の戸籍謄本
財産目録
限定承認申述受理証明書
不動産登記簿謄本
C審判手続
鑑定人は、限定承認者の弁済すべき価額を決定するために選任されるものですから、家庭裁判所は鑑定を命じたり、鑑定の結果を提出させたり、鑑定に要した費用の支払を命じたりする必要はなく、単に評価すべき物件を特定して鑑定人を選任すれば足ります。
鑑定人の意見の聴取については明文の規定はありませんが、鑑定人の適否を調査し、鑑定の内容を説明して就職の諾否いかんを確かめるためには、選任前に審問を行なうことは差し支えないといわれています。
動産、不動産評価のため、複数の鑑定人を選任することもできます。
家庭裁判所は、申立を相当と認めるときは、鑑定人を選任する審判をし、その審判は告知により効力を生じます。
選任の審判・却下の審判のどちらに対しても不服の申立の規定はありません。
評価未了のうちに鑑定人が辞任の届出をしたときは、家庭裁判所は職権をもって別の鑑定人を選任することができるものと解されます。
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